第14回杉診サロン報告書(個別労働紛争事例から労働法を学ぶ)

中小企業診断士であり、特定社会保険労務士である井上環氏が「個別労働紛争から労働法を学ぶ」のテーマで講演をされた。(1)講演者の略歴

(1)個別的労使関係 ・労働契約法 (4)労働教育関係 ・職業の能力開発促進法
・労働基準法 (5)安全衛生法 ・労働安全衛生法
・男女雇用機会均等法 ・じん肺法
・育児・介護休業法 (6)労働保険関係 ・雇用保険法
(2)集団的労使関係 ・労働組合法 ・労働者災害補償保険法
・労働関係調整法 (7)生活安定関係 ・勤労者財産形成促進法
(3)雇用関係 ・職業安定法 ・労働金庫法
・身障者雇用促進法 ・中小企業退職金共済法
・高齢者雇用安定法 ・最低賃金法
・労働者派遣法 その他

2.労働法を理解する理由

(1)労働紛争の解決に当たっては労働法の解釈が判断のポイントになる。

(2)労働法を理解していないと無用な労働トラブルを引き起こす場合がある。

⇒労働法を理解した上で使用者として有利な対応を心掛ける。

(3)労働法に関する誤解を避ける 。

ア.管理監督者の範囲

イ.雇用と雇用以外の違い

ウ.試用期間 等

3.労働法と労働紛争を考える視点

(1)労働紛争は労働(雇用)契約に起因する紛争である。

(2)労働(雇用)契約は民法の契約自由の原則に基づいている。

(3)労働(雇用)契約は労働基準法等によって契約自由の原則に規制が加えられている。

(4)労働(雇用)契約を規定するものとして労働契約法がある。

(5)労働(雇用)契約は長期にわたる契約であり、契約の成立以降、多くの変更を経て、 終了する 。

(6)労働基準法は労働条件の最低基準を定めるものである。

平成7年、若手経営者や2代目の集まりの青年会を中心に組織改革を行う。理事14名の平均36.7歳と一気に30歳ほど若返った。

4.労働(雇用)契約の特徴

(1)双務契約に基づく債権債務関係は、特段の事情がない限り同時に履行されなければ

ならない

(2)雇用契約における債権債務関係は、法律上、労働提供義務が先履行となっている(民法624条)

(3)通常の取り決めとして賃金支払日は、所定の賃金支払期間の労働に対して後払い

(4)雇用契約は契約自由の原則により、労働基準法の範囲内で、公序良俗に反しない限り自由に締結できる

5.労働契約法

○平成20年3月1日から施行(すなわちそれ以前は労働契約を規定する法律は民法が中心)

○労働契約法の主な内容

(1)労働者と使用者が、「労働すること」「賃金を支払うこと」について合意すると労働契約が成立する(第6条)

(2)労働者と使用者が労働契約を結ぶ場合に、使用者が(1)合理的な内容の就業規則を、(2)労働者に周知させていた場合には就業規則で定める労働条件が、労働者の労働条件になる(第7条本文)

(3)労働者と使用者が、就業規則とは違う内容の労働条件に合意していた場合には、その合意していた内容が、労働者の労働条件になる (第7条ただし書)

(4)使用者が一方的に就業規則を変更しても、労働者の不利益に労働条件を変更することはできない (第9条)

(5)客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当と認められない解雇は、権利を濫用したものとして無効となる(第16条)

6.個別労働紛争の解釈

(1)退職と解雇

ア.退職とは~労働者の方から労働契約を解約すること。

イ.解雇とは~使用者による労働契約の一方的解約。

ウ.解雇には、病気等により労働義務が遂行できないことを理由とする(1)普通解雇、業務命令違反など経営秩序侵害を理由とする(2)懲戒解雇、経営悪化を理由とする(3)整理解雇がある。

エ.労働契約法では、解雇は、「客観的に合理性な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合」は解雇権の濫用として無効になるとしている。

オ.懲戒解雇は懲戒の事実(就業規則の明記)、整理解雇は会社の業績の悪化の条件があり、適用範囲は限定的である。

カ.普通解雇は能力不足等についての客観的な証拠(教育可能性も含む)がないと実際上の適用はできない

(2)労働条件の不利益変更

【労働契約法より】

○使用者が一方的に就業規則を変更しても、労働者の不利益に労働条件を変更することはできない。(第9条)

○使用者が、就業規則の変更によって労働条件を変更する場合には、次のことが必要。(第10条)

ア.その変更が、以下の事情などに照らして合理的であること。

・労働者の受ける不利益の程度   ・労働条件の変更の必要性

・変更後の就業規則の内容の相当性 ・労働組合等との交渉の状況

イ. 労働者に変更後の就業規則を周知させること。