第33回杉診サロン報告書(先客万来!「教会通り物語」-自分たちが主役 仲間の魅力発掘作業)

第33回杉診サロン 講演内容の報告

豊岡 来実

(1)日 時  2013年7月5日(金)午後7時~8時30分
(2)場 所  杉並区立産業商工会館 第一、第二集会室
(3)テーマ  先客万来!「教会通り物語」
-自分たちが主役 仲間の魅力発掘作業-
(4)講 師  教会通り新栄会 会長 斎藤 敬子様
中山  弘 様
(5)内 容

会長 斎藤 敬子様の講演

1)商店街の概要
荻窪駅北口、青梅街道から路地を入り北西方向に進み、天沼教会に行きつくまでの約300mの範囲が教会通り新栄会である。
幅4mの狭い通りに加盟する80数店舗の商店があり、個人、家族経営主体の小規模店が多い。チェーン店、生鮮三品の店がほとんどなく、個性的な専門店、対面販売の店が多いことが特徴である。商店会の会員同士は仲が良く、お互いに親しく交流している。車はほとんど入って来ない狭く曲がった道となっており、それが幸いして、先にどんな店があるのかとお客様が楽しんでくれているようである。

2)ICTを活用した独自の取組み
商店会の組織には役員会、婦人部、青年部に加えて「Web委員会」が設置されており、HPの作成のほか、ICTを活用したさまざまな情報発信を行っている。各商店主が手作りで番組を制作し、配信するというメディアを活用した「千客万来 教会通り物語」は、独創的な事業と評価され、平成22年東京都主催の第6回東京商店会グランプリの最上位賞を受賞した。また、東京販売士協会主催の平成22年度「エネルギッシュ・タウン」表彰商店街の大賞も受賞している。

3)会長がリーダーとして実践したこと
①商店街を積極的にアピールする
HP、フェイスブック、独自の動画配信などICTを活用した取り組み、テレビ、新聞などの各種パブリシティの活用など、様々なメディアを使って商店街をアピールしている。個店が紹介される機会があれば、必ず教会通り新栄会の名前を入れてもらっている。
②街路灯の改装
商店街としての懸案事項であった街路灯は、会長自らが杉並区に申し出て補助金を申請し、その支援を活用してLEDシンボル灯を導入。街の美観ばかりでなく、電気使用量の大幅削減にもつながり、一石二鳥の効果を生んだ。
③商店街の世代交代としての後継者づくり
商店街活動に若手が参加してもらう方法を実践している。かつて、イベントの縁日で会長自らが焼きそばを焼いていた。焼きそばを焼くのは、熱いうえ力もいる大変な作業である。会長のその姿を見て、青年部の若者たちが、「僕たちがやるよ」と言ってくれた。「あなたたちやってよ」とこちらから言うより、「僕たちがやるよ」と言ってくれるのを待っていた。こうしたことが世代交代に繋がると思っている。それ以来、会長は焼きそばを焼いたことはない。

4)心のバリアフリー
会長はじめ商店街として大切にしていること、それは「心のバリアフリー」である。商店街を訪れるお客様が楽しく、安心してお買いものをしていただくために、何かしなければ、ということよりも、商店街のそれぞれのお店がお客様にやさしい心のこもった対応をすることが大切であると考えている。

5)地域との交流
当商店街では、もちつき大会、縁日、年末恒例の「みんなおいでよ」、「ニコニコチャリティワゴンセール」などの各種イベントが盛りだくさんである。また、町会との支援バザー、南相馬の支援バザー、子供たちのお店体験など、街、町会を巻き込んだ活動により地域との交流を深めている。

6)商店街で協力を得るためのポイント
とにかく、みんなに参加してもらうこと。そのためには、個店に無理を強いたりしないことである。それぞれの商売でみんな忙しいので、「無理しないで、でも少しだけ無理してね」というスタンスを大切にしている。商店街の後継者づくりも進み、今は自信を持って活動に取り組んでいる。これからも少しでも良い商店街にして皆様に喜んでもらいたい。

中山  弘 様の講演

(報告者からのコメント)
中山様は、当商店会のICT推進の中心的役割を果たしている方で、先客万来「教会通り物語」の立役者である。
講演ではHP、フェイスブックなどのウェブ上の具体的な取り組み状況を見ながら説明していただいた。

1)教会通り商店街がうまくいっている理由
教会通りでは「心のバリアフリー」を全店舗で実践している。最後はこれに尽きると思っている。教会通りは、店舗の間口が狭い店が多い。車椅子で来られるお客様もいる。でも、店主はしゃがんで、お客様の目線でお話ししながらお客様をお迎えする。このことを商店街の全店舗で行っている。
商店街がうまくいっているもう一つの理由は、若手が自然に参画できる仕組みがあることである。具体的にはつぎの3点である。

2)若手の参画を促すポイント
①褒めること
商店街の活動にフェイスブック、スマホを積極的に活用して若者中心にやってもらう。結果を褒めること。褒めてもらえば、本人も嬉しいので、また引き受けてくれる。
②Web委員会
商店街では当初、Wordを使用してお品書きや年賀状の作成を習っていた。その後はHPの作成をするようになった。今では、商店街ICT活用の要となっている。若手中心だが、年齢を問わず参画できる。十数人が報酬なし、飲み会も割り勘で活動している。
③チームで進める
活動はチーム制をとっている。「くじらチーム」と「STT」チームに分かれて、各店舗の取材などを進めている。2チームに分けることがポイントである。
どこの店を取材するかなどを決め、お互いが競い合ってよいものを作る。これいいね、と認め合いながら吸収し合う。複数のチームで活動するメリットを生かしている。
若い人に任せて、褒めて、また活動につなげるという好循環が出来上がっている。

3)まとめ
当商店街では各店舗の動画をHP上で掲載している。当商店会のHPを見て、新規出店を決める店主も多い。HPの充実は空き店舗対策にもつながっている。
さらに、教会通り商店街は3年前からWi-Fi利用が可能となっている。これにより、ネットを活用したいビジネスマンの利用が増えることが見込まれる。

(6)質疑応答
ITを使いこなすことの難しさについて、Web委員会の状況、HPについての効果など、活発な質疑応答が行われた。

(7)セミナーに参加して
私は商店街で毎日買い物をする者として、「心のバリアフリー」という言葉が印象に残った。今回はICTを活用した商店街の取組みがテーマであったが、この前提として、まず、人にやさしい商店街であること、ひとりでも多くのお客様に喜んでもらえる商店街であることが大切であり、ICTの活用はそれを実現するために有効な手段であると思う。
今回の講演では、インターネット上で各店舗の動画での説明が行われ、「教会通り物語」の実際の場面を解説付きで見ることが出来て参考になった。HP、フェイスブックにぜひアクセスしてみていただきたい。講演内容の理解が一段と深まると思う。