第26回杉診サロン報告書(法人税の基礎知識、消費税の基礎知識)

今回は、本会会員であり、税理士である吉開慶一氏に「法人税の基礎知識」、「消費税の基礎知識」について講演してもらいました。
要旨は以下のとおりです。

1.法人税について

1)法人税額 計算の流れ

 1)法人税額 計算の流れ

企業利益  →  法人税課税所得X税率-特別控除額(*)+特別税額(*)

⇒  -控除税額(*)=法人税額

(*:法人税固有の論点)

企業会計と法人税法の差異を調整

 

2)企業会計と法人税法の差異

(1)企業会計上の経費(収益)だが、法人税法上の損金(益金)にはならないもの 1)租税公課の一部(法人税、住民税、延滞税、加算税)

2)役員賞与(事前確定届出給与、使用人兼務役員の使用人分賞与は損金算入が認められる)

3)資本金1億円超及び資本を有しない法人の交際費

4)貸倒引当金、返品調整引当金を除く引当金

5)故意、重過失に基く損害賠償金

6)不正行為等による行為(罰科金、交通反則金、賄賂)

7)受取配当(会計上は収益、法人税法上は益金不算入)

(2)損金算入に制約が設けられているもの 1)貸倒損失(損金算入には、非常に厳格に適用)

・法律上貸倒れ(債権が法的手続きで切り捨てられた場合等)

・事実上貸倒れ(売掛債権全額が支払い能力などで回収不能等)

・形式上貸倒れ(売掛債権が支払い能力などで1年以上経過等)

2)資産の評価損(損金算入には、非常に厳格に適用)

・固定資産評価損(災害による著しい損傷、所在場所の変化等)

・棚卸資産評価損(災害による著しい損傷、著しい陳腐化等)

・有価証券評価損(価格の著しい低下(上場株式)等)

(3)損金算入に限度額がもうけられているもの 1)減価償却費(各資産ごと法定耐用年数に基く償却率適用)

償却限度額を限度に損金算入可能、償却は任意である。

2)引当金(貸倒引当金、返品調整引当金)

法定の繰入限度額を限度に損金算入が認められている。

個別評価貸倒引当金、一括評価貸倒引当金

3)交際費(資本金1億円以下の法人)

600万円の定額控除限度額まで金額の90%相当額が損金算入可

4)寄附金(繰入金額を限度に損金算入が可能)

普通法人 (資本等の額X0.25%+所得の金額X2.5%)÷2

5)繰延資産(一旦資産に計上し、法定償却年数で償却)

・公共的施設(商店街アーケードなど)等を設置するための負担金等

・資産を賃借するための権利金等(礼金、リース資産設置費用等)

・自己が便益を受けるための費用(借入金の信用保証料等)等

6)役員報酬、特殊関係使用人給与

・不相当に高額な部分の金額は損金不算入

・定期同額給与でない給与は損金不算入

7)役員、特殊関係計使用人への退職給与

・不相当に高額な部分の金額は損金不算入

・実務上は、功績倍率法で判定される

功績倍率=退職金の額/(退職時の報酬月額X勤続年数)

(4)欠損金の繰越控除 青色申告書を提出した事業年度に生じた欠損金額は、翌事業年度以後9年間にわたり、各事業年度の所得金額から控除することができる。

3)役員報酬について

(1)役員報酬の基本的な考え方 役員報酬は原則、損金不算入であり以下に限り算入が認められる

(1)定期同額給与

(2)事前確定届出給与

(3)利益連動給与

(2)定期同額給与 支給期間が一ケ月以下の一定期間ごとに支給額が同額であるもの

(Ⅰ)通常改定(事業年度開始の日から3月以内に改定)

(2)臨時改定自由による改定(職位変更、不祥事による減額等)

(3)業績悪化改定事由による改定(法人経営状況が著しく悪化)

(3)事前確定届出給与 役員賞与の支給額及び支給時期を事前に届ければ、役員賞与の損金算入が認められる
(4)利益連動給与 運用対象が、有価証券報告書を提出する非同族法人であり、要件も非常に厳格である

4)法人税率の変更(適用は、平成24年4月1日以後開始する事業年度から)

平成23年改正により、法人税率が以下の通り変更になった。

30%(18%)→25.5%(15%)X1.1=28.0%(16.5%)

( )は、中小法人の課税所得800万以下の税率、1.1は、復興特別法人税分

5)各種 特別控除

(1)試験研究費の特別控除

(2)中小企業者等が機械等を取得した場合の特別控除

(3)雇用者数が増加した場合の特別向上(平成23年改正)

2.消費税について

1)消費税の計算の流れ

預った消費税 ― 支払った消費税 = 納める消費税

(1)消費税の形式的な納税者は事業者であるが、事業者は預った金を納めるだけで実質的な納税者は最終消費者である。(事業者は、最終消費者に代わり納付)

(2)免税事業者は消費税の納付義務がないが、消費税を預る権利がない訳ではない。

(3)簡易課税は、支払った消費税を簡便的に計算する方法である。

2)消費税の課税の対象

消費税の課税の対象になるのは、以下の4つの要件をすべて満たしている場合であり、1つでも要件を満たさない場合は、消費税の課税対象とはならない

(1)国内取引であること。(資産が国内にある、役務の提供地が国内での取引)

(2)事業者が事業として行うものであること。(資産の譲渡等を継続、反復)

(3)対価を得て行うものであること。(対価は、反対給付を言い、現物の資産も含む)

(4)資産の譲渡(交換も含む)または貸付もしくは役務(サービス)の提供であること。

3)消費税の非課税

(1)消費税の性格上課税することがなじまないもの。

(i)土地の譲渡及び貸付、(ii)有価証券、支払手段等の譲渡、(iii)貸付利子、保険料等、(iv)郵便切手類、印紙および証紙の譲渡、(v)物品切手等の譲渡、(vi)行政手数料、(vii)国際郵便替、国際郵便振替等

(2)社会政策的配慮に基くもの。

(i)医療保険制度の医療の給付、(ii)介護保険サービス、社会福祉事業等、(iii)助産、(iv)埋葬料、火葬料、(v)身体障害者物品の譲渡、貸付等、(vi)学校教育、(vii)教科用図書の譲渡、(viii)住宅の貸付

4)消費税の輸出免税

課税事業者が行う課税資産の譲渡等のうち、輸出取引等に該当するものについては、消費税を免除する。

5)消費税の免税事業者

(1)基準期間における課税売上高が1,000万円以下の事業者は、納税義務が免除される。(基準期間とは、個人事業者・・・前々年、法人・・・前々事業年度)

(2)基準期間のない新設法人は、資本金が1,000万円未満であれば納税義務が免除される。(平成23年改正)前事業年度(前年)の前半6月の課税売上高が1,000万円超で、かつ給与が1,000万円超である場合は、納税義務は免除されない。

6)簡易課税制度

預った消費税額(課税標準額に対する消費税額)にみなし仕入率を乗じ計算した金額。

みなし仕入率(第一種(卸売業)90%、第二種(小売業)80%、第三種(製造業、建設業等)90%、第四種(その他)60%、第5種(サービス業)50%)