第34回杉診サロン報告書(商店街に知的財産権は必要か)

第34回杉診サロン報告書

河合史門

(1)日 時  2013年8月2日 午後7時~8時30分
(2)会 場  杉並産業会館 第一集会室
(3)テーマ  「商店街に知的財産権は必要か」
(4)講 師  弁理士 金尾良子 様
KANAO知財オフィス代表
東京都立大学理学部化学科卒業。三井金属鉱業株式会社を経て、2005年弁理士登録、2012年独立。

(5)内 容

1)KANAO知財オフィスの業務内容について
①企業戦略における知的財産戦略の見直し
②知的財産業務の補完
③知的財産に関する相談対応

 

2)知的財産権の種類について
特許権、実用新案権、意匠権、商標権

3)どのような場合に知的財産権は必要か
中国商標抜け駆け登録を例に、知的財産権が意味を持つ場合について具体的にお話しいただいた。

4)商標について
①商標って何?
商品の名前、会社や店の名前・マーク、サービスマーク、文字や図形以外の商標
②商標登録って何?
自社の商標を、商品・役務を指定して特許庁に出願し、審査を通ると「商標原簿」に書き込まれる。登録料の納付は必要。登録されたその日から商標権が発生する。
③商標登録のメリットは?
登録商標をその指定商品・役務に、承諾なしに使った他社に対し、使用中止を請求できる。他社に譲渡やライセンスも可能。
登録商標と類似の商標を、同一・類似の指定商品・役務に使った他社に対しても、使用中止請求ができる(紛らわしいものも不可)。
④商標登録にいくらかかるか
様々な例を挙げて具体的にお話しいただいたが、弁理士に頼む場合、登録までの費用は8~16万円程度。
⑤商標登録のフローと手続
商標登録は事前調査が重要なポイントとなる。事前調査は自分でも可能である(同一商標の有無をIPDLで調べる)。しかし、類似性の判断など複雑なものは商標専門の弁理士に依頼する方が無難である。

5)商店に商標登録は必要か~その判断基準~
①模倣される可能性はあるか
②審査を通るか
③商標登録コストと営業収支のバランスはどうか
④長く使いたい商標か
⑤広く、HPなどで宣伝するか

6)商店街も商標登録できるか
「高知e商店街」「錦市場」「昭和縁結び通り」などの例をお話しいただいた。

7)終わりに
商標登録をしたからと言って、売り上げが上がるわけではない。
商店として、商店街として、どのような特徴を発揮して生き残りを図るのか、それとも、商店・商店街のブランドとして、全国、さらには世界に向けて発信するのか。
商標登録など、知的財産権の活用の仕方は、商店・商店街のみなさんがどのような将来像を描くかによるのである。

(6)質疑応答
会員から、自分が支援している商店街の商標などに関し、具体的な質問があった。

(7)セミナーに参加して
私自身、いま支援している企業から商標をとりたいという相談を受けていたので、このセミナーは楽しみにしていた。
内容的に大変に充実した内容で、かなりいろいろな問題が整理されたと感じた。
また、金尾先生はご自分では商標登録の手続をビジネスとしておられないので、商標を取得すべきかどうかに関し、客観的な立場で適切な判断を示してくださる(私の支援先も他の弁理士からは商標を取得することを勧められていたが、セミナー後金尾先生にご相談した結果、今では少し時期を待ちたいと考えている)。
いずれにせよ、分かりやすくためになるセミナーだったと思う。