高円寺ルック商店街診断を終えて

副理事長 伊藤 恭

本年6月、7月にかけて、杉並中小企業診断士会の有志メンバーで高円寺ルック商店街の診断を行った。

高円寺ルックは、正式名称を新高円寺通り商店街振興組合といい、高円寺パル商店街と地下鉄新高円寺駅(青梅街道)とを結ぶ約600mの商店街である。業種構成に大きな特徴があり、全173店舗のうち、42店が古着屋である。

ルック商店街の組合員に対して行った意識調査、来街者アンケートでは、いくつかの注目すべき結果が出た。まず、ルック商店街組合員に対して商店街の景況感をたずねると、「繁盛している」、「まあ繁盛」の合計が41.2%に達している点である。中小企業庁が行った2006年度全国商店街実態調査によれば、「繁盛している」と認識していた商店街は、わずか1.6%にすぎない。日本中の商店街が衰退している中で、ルック商店街のこの結果は驚きである。

図1:業種と景況感

繁盛している まあ繁盛 徐々に衰退 衰退している (空白) 総計
小売
3
25
26
16
3
73
外食
1
3
2
4
10
サービス
1
9
10
1
2
23
その他
3
3
(空白)
2
総計
5
42
41
21
5
114

次に、ルック商店街を訪れる来街者に対してルック商店街に対する好感度を聞いたところ、「大好き」、「まあまあ好き」という積極的評価が95%という結果が出た。調査員に対面してアンケートに応える時に、「嫌い」とは言いにくいという側面もあるだろうが、やはり特徴的な結果と言う事が出来るだろう。商店街がこれほどまでに来街者に支持されていることは、調査にあたった我々として予想外であった。

図2:商店街好感度調査

大好き まあまあ好き 好きでない 無関心 無回答 総計
女性
25
33
1
59
男性
18
35
3
1
1
58
合計
43
68
3
2
1
117

このように見ると、ルック商店街は今時珍しい元気のある商店街であるように感じられる。ところが、現実は決して楽観視できるような状況にないのである。

我々が実施した調査では、約70%の店で昨年と比べて売上が減少しているという結果がでている。廃業を検討している店が少なくないこともわかった。一見すると矛盾するような回答だが、自店の業績が悪化していても、商店街は賑わっていて繁盛しているという認識があるのかもしれない。

また、組合員の商店街活動への参画意識を聞いたところ、「商店街活動に協力しない」、「商店街組合の存在意義を感じない」と答えた組合員数が全体の半数となった。

こうしたことから判断すると、ルック商店街は盛況で結束力のある商店街とは決して言えないだろう。活発な組合活動の成果ともいえるルック商店街のハード事業、ソフト事業とも、区内の有力商店街に比べるとかなり見劣りする。積極的な組合活動が商店街に繁栄をもたらし、顧客から高い支持を得ているということではないということになる。

ではどうして、景況感や好感度に関する調査に前述のような結果がでたのであろうか。ルック商店街には多数の古着屋が集積し、全国から客を呼ぶ人気古着屋が多数存在している。おそらく、ルック商店街の中の一部のこうした店の存在が、ルック商店街に賑わいを演出し、商店街に対する好感度を高めているのだと考えられる。ルック商店街の組合幹部にとっては、一部のニューカマーである古着店の存在が、このように商店街の存在感を高めたことは、全く意図しなかったことであろう。言いかえれば、他力本願、結果オーライなのである。

とはいえ、今のルック商店街は、これまでのルック商店街のイメージを変え、商店街を活性化する千載一遇のチャンスであるとも言えるだろう。ルック商店街は、一部に芽生えた賑わいと商店街のイメージを商店街全体に広げていけばいいのである。具体論としては、何も商店街中を古着屋に変える必要はない。古着屋をベースにして、古着屋が他業種とシナジーを発揮できるような商店街にしていけばよいのである。「0」を「1」にすることは困難だが、「1」を「2」にすることはそれほど難しいことではないはずである。

ルック商店街が真の意味で元気な商店街に脱皮するためには、知性と行動力を持つ新しいリーダーを先頭にして、商店街としてのビジョンを掲げ、組合活動に新しいアイデアを持つ若い人材を取り込み、組合が一致団結して行動していく以外ない。この機を逃せば、ルック商店街は、正真正銘の衰退商店街になってしまうと思う。