第7回杉診サロン報告書(中小企業に「企業の見える化」を進める時のポイント)

今回は、城西支会の「見える化研究会」のリーダーである平松徹氏が「中小企業に「企業の見える化」を進める時のポイント」について講演をされた。24名が参加した。講演の要約は、以下のとおりである。

1.見える化の判断基準

(1)必要な情報が手に取るように見えるかどうか

(2)外へは必要性をアピールし、内には、必要な情報が共有化されているかどうか

2.企業の見える化の進め方のポイント

項目

補足内容

  1. 企業の見える化の効果
必要事項が明確で良く分かれば、課題に対して適切な手が、よりタイミングよく打てる。
  1. 課題・知恵・人の見える化が大切
これらの見える化で企業は自然と盛り上がる。
課題の見える化、課題が自然と明確になる装置が必要 課題に対する対策が打たれ、フォローアップするためのツール、手順書が必要である。
  1. 修正処置と是正処置の違いを理解する
修正は事実の修正であり、是正は再発防止のための原因の除去をいう。
  1. 情報は隠れたがる
企業には、「見せたくない情報」、「見られたくない情報」が多数ある。情報は自然に任せておけば滞留し、企業運営を阻害することが多い。
  1. 悪い情報は早く報告するのが鉄則である
トラブルは初動が大切である。上司が「力量、責任と権限」を生かし、効果的な手を打つことが肝要である。
  1. 知恵の見える化(知恵を結集すること)が大事である
知恵を会社の財産(共有化)とするため、知恵を集める仕組みを作り、確実に文書化することが肝要である。組織には、知恵の貯金箱が必要である。個人に属する「暗黙知」を、だれでも共有できる「形式知」とすることが肝要。
  1. 文書化し、教育訓練を行う
文書化できれば、それを教育訓練で身につけることができる。会社の知的基盤のグレードアップにもつながってくる。
  1. 「守秘性の高い情報」、個人に「囲い込まれている情報」も企業の中で共有化する
業務上のノウハウや業務の効率的な手順などは、業務手順として共有化する。「知恵の見える化」のポイントは、グレードの高い情報を組織として共有化することである。
  1. 5Sは空間の見える化として重要、まず、整理整頓をおこなう
うまく整理されていると、モノが「誰でも一目でわかるところにある」。「誰でもすぐ使える」、そして「誰でもすぐ戻せる」。3定(定位、定品、定量)が整頓の極意である。
  1. 人の見える化をおこなう
人についての役割、責任、権限を明確にすることが大切である。マズロー欲求5段階の4番目に尊敬の欲求がある。人がその気になるのもならないのも、この尊敬の欲求をどのようにうまく活用して良い意味での動機づけにつなげていくかが大切である。
  1. 加点主義をおこなう
課題を解決すれば、マイナスも取り返せるし、良い仕組みを積極的に提案できるなどメリットがあり、加点主義が望ましい。頑張った人を褒める仕組みを作るのも大切である。
これからの中小企業には人対策が急がれる これからは人材不足の時代がやってくる。優秀な中小企業の利益率は、大企業のトップの利益率を大きく上回っていることもあり、今から、人対策の手を打っていくことが大切である。
「標準化」することで「見える化」する 物事を明確にするのが見える化の前段階になる。そのための有力な方法が、「標準化」である。

大切なのは、「必要な情報が手に取るように見える」ようになっているかどうかである。

重要でないものが文書化されると「一害あって百利なし」である。だから、マネジメントとしてABC分けをする。特にいらないものを整理し、残ったものを整頓する2Sがここで活きてくる。

標準化の結果としての様式モデルなどのツールを使うと業務効率も向上する。

3.質疑(→は、講師の回答)

(1)「見える化」のなかで、課題・知恵・人の見える化に加え、業務の見える化(業務プロセスの明確化)が必要と思うがどうか。→その通りである。

(2)本日のテキストの事例では再発防止策が事実の修正となっており、汚してから対策でなく、汚さないための対策が是正処置(再発防止処置)と考えるがどうか。→そのとおりである。この事例では、企業のレベルに対応してこのように整理した。

(3)原因の見える化を判断する場合の基準は何かあるか。→直観の世界である。社長が何を望んでいるか、会社にとって何が良いかを考える。私自身、ISOのコンサルティング、審査(9001,14000)を12年間やっており、そのISO規格が自分の頭に入っている。ISOの基準に照らして課題の抽出やあるべき姿をとらえている。