第13回杉診サロン報告書(未来志向型商店街を考える) 

「未来志向型商店街を考える-岩村田本町商店街・御田町商店街を事例に-」

(1)講演者の略歴

今回は、(株)全国商店街支援センター事業統括役 藤田とし子氏を講師にお招きしました。講師の経歴は、東京都出身で大手流通会社(西友ストア)に入社し、現場店をはじめ、本社財務やマーケティングを歴任した。育児のため退社後、地域の情報誌執筆・編集等に携わる。平成17年NPO法人柏市インフォメーションセンター事務局長として活躍し、19年には活動で総務大臣賞を受賞した。平成22年(株)全国商店街支援センターに入社し、事業統括役を担当し、現在に至っている。

(2)講演概要

商店街の活性化について、共に長野県にある二商店街を事例に活性化のヒントを述 べられました。どちらも、商店街活性化には、(1)活発な組織とリーダーの存在(岩村田は理事長、御田町はおかみさん達)、(2)地域の困り事に対応したり地域資源の利用等の独自色追求、お客様にこびらず工夫する楽しみがポイントで、またマップを使った、集客イベントとその後の集客に繋げるバルイベントという手法を紹介されました。

(3)岩村田本町商店街の事例

ア.位置:長野県東南部の佐久市、最寄駅:長野新幹線佐久平駅、 八ヶ岳高原線(旧小海線)岩村田駅

イ.キャッチフレーズ:地域密着顧客創造型商店街で活性化、共に生き、共に働く、共に暮らす。

ウ.土地の特徴:中山道沿いの商業集積として繁栄を極めた。どこへ行くにも車を使う土地柄である。

エ.問題点:

  • 高速道、長野新幹線駅開業等で郊外型大型店や、チェーン店の出店で商店街空洞化が進み、空き店舗率がピーク時は30%を越える。(49店舗中15店舗)
  • 高齢者の増加と宅地造成による地縁血縁のない若者家族の増加が平行し進行する。

オ.転換点:

平成7年、若手経営者や2代目の集まりの青年会を中心に組織改革を行う。理事14名の平均36.7歳と一気に30歳ほど若返った。

カ.実施したこと:

イベントで集客を6年続けるも商店街の活性化とはならず失敗した。そこで商店街会員、周辺住民を対象にアンケート調査(6,000世帯)を実施した。すると、(1)交流する場が欲しい。(2)生鮮3品(魚屋、肉屋、八百屋)がない・・・。
との声が寄せられ、理事会で吟味し、

  • 空き店舗対策でも、撤退した空き店舗に同じ業種店を出してもやっていけない。
  • 理事は自分の店以外に一事業に関わるルールを作り、責任者になって貰う。
  • 経営戦略を身につけ、PDCAを実践する。
  • 各施策がバラバラに動くのでなく、連携して動き相乗効果を狙う。
  • 事業個々で利益を求めるのでなく、全体で利益を考える。

といった方針のもと、次の対策を考え実施した。

(ア)コミュニティ広場“中宿おいでなん処”をオープンする。

無料のお休み処で、会議スペースやキッチンも整備しコミュニティの場を提供する。理事会もここで実施し多目的に利用している。

(イ)“本町おかず市場”という総菜店を出店する。

事前にアンテナショップで顧客のニーズをつかみ、大型店と同じような総菜でなく、地域の食材を使い地域の伝統食等を品揃えする。また、POSを使い人気 のないメニューは入れ替え、他事業の原資を生み出す。

(ウ)若き起業家のために開業支援の場を提供する。

1店舗を6つに分け(25坪)、1.5万円/月で貸し出す。その他にも、チャレンジショップ『本町手仕事村』、子育てお助け村事業、岩村田寺子屋塾、起業家育成塾、商店街直営飲食店を運営、イオンと提携し佐久っ子WAONカード事業などを実施する。

岩村田本町商店街のホームページ:

http://www.iwamurada.com/