第23回杉診サロン報告書 (中小企業のための要領良く銀行と付き合う法)

第23回杉診サロンが、7月6日(金)杉並区立産業商工会館で開催されました。今回は、杉並診断士会の大西会員に「中小企業のための要領良く銀行と付き合う法」のテーマで2時間の講話をして頂きました。

1)中小企業にとっての銀行取引とは?

(1)資金繰りは、中小企業経営者にとって最重要課題です。そして円滑な資金繰り確保は殆どの中小企業にとって銀行次第です。
(2)本来は、もっと本質的な経営課題(顧客開拓、製品開発、人材育成)に取り組むべきであり、銀行取引はできるだけ「要領よく」効率的に済ませることが肝要。

2)銀行の行動原理を理解し、要領良く対応

(1)銀行の考え方・行動原理を知る。その考え方・行動原理に合わた対応が肝要。
(2)銀行の考え方・行動原理
  1)業務目標が第一、過去の実績・数字を信用・減点主義、横並び意識が強い
  2)融資の判定結果は総合的判断、本部や金融庁の意向が大切にされる

3)銀行の組織体制と意思決定

(1)メガバンクの法人担当と組織 支社、支店、法人営業
(2)審査手続きと決裁権限 1)支店;担当、課長、副支店長、支店長、ビジネスローン(1億円以下)は支店長。2) 本部;審査役,上席審査、部長、副主任

4)銀行の業務目標と貸出姿勢

(1)メガバンクの業務目標 収益;預金、外為、手数料、貸出金;年間残高、新規先
(2)メガバンクの貸出姿勢 貸したくて仕方ない。「貸し渋りはない」
(3)地銀・信金の貸出姿勢 地銀は、都内では貸出攻勢。信金は地道に地元志向

5)信用保証協会付融資

(1)「マル保」付融資の位置づけ;ノーリスク(2)責任共有制度;80保障なら貸さない。(3)「小口」、「セフチーネット5号」、「震災緊急」の違い

保証の受けやすさ=「小口」<「セフチーネット5号」<「震災緊急」

6)銀行から借りられる会社か見極める。

(1)銀行は決算書の (I)B/S;債務超過、月商比率。(II)P/L; 増収、増益(2)自社の「格付け」、「債務者区分」を知る。(3)銀行から見た3種類の会社;A;貸したい会社、B;どちらとも言えない会社、C;貸せない会社

7)絶対に借りられない会社とは

(1)こんな業種は借りられない 反社会的業種
(2)こんな決算書では借りられない 債務超過、実質債務超過
(3)こんな過去では借りられない 手形事故、代表者の事故
(4)こんな使途では借りられない 投機、転売

8)こんな会社でも借りられる。

(1)連続赤字計上 赤字の原因が明確、対策と計画が明確、先行き回復見込み。
(2)リスケをしている S-5等公的制度
(3)担保ない リスケ後の返済実績、10年で返済可能な元本

9)銀行が「貸せる」会社になるには。

(1)赤字でも良い、赤字圧縮(業務改善など)が重要(2)増収より増益、減収増益で可能;安定性、収益性が鍵(3)手数料・収益につながる会社

(4)資料作成・提出力のある会社;資金繰り計画表,当期予算計画、中期計画作成など

10)「微妙な」会社が借りられる方法 I

(1)銀行へのアプローチ 銀行のアプローチを待つ。有力者の紹介はダメ。
(2)興信所との付き合い 日頃からの付き合いが大事、50点以上にする
(3)自社に適合した銀行を選定 メガバンクは原則売上10億円以上の会社が対象
(4)決算書作成にも「工夫」 1)当期利益より経常利益を重視→特別損失にする2)財務会計より税務会計3)償却不足はやむなし

11)「微妙な」会社が借りられる方法 II

(1)借りやすいタイミングを知る 1)銀行側の要因;期末、支店長交代、合併時期2)会社側の要因;業績の回復期
(2)借りやすい借り方を知る 借入方法;商手>手形貸し>証貸>当座貸の順

12)「微妙な」会社が借りられる方法 III

(1)担保や保証人はこうする 保証人は社長のみ、保証協会の利用
(2)事業計画(経営改善計画)はこう作る 売上は横這い、コスト削減を計画
(3)借りるための資料作成 数字の表、箇条書き、具体的データ、資金繰り計画、B/Sが大切

13)リスケジュール(条件変更)の留意点

(1)事前準備と申し出のタイミング;新規の借り入れ申し込みから(2)どの銀行に申し出るか?メインが先

14)金利引下げ等の申し出を実現するには

他行との比較、業績の改善タイミング。自助努力とコスト削減を先行させる

15)金融円滑化法終了でどうなる

(1)リスケ先はどうなる 計画の80%以上を確保、元本返済を少し行う
(2)どんな会社が見放されるか 1)借入過多、債務超過の解消見込みなし2)償却CFがジリ貧、黒字見込みなし
(3)どうしたら生き残れるか 自助努力が前提

16)まとめ

(1)円滑な銀行取引は資金繰り確保に不可欠。→無駄な労力を使わず、要領よく済ませよう。(資金繰り=銀行取引に追われていると他のことに手がつかない。(2)経営者は、銀行取引よりも大事な事に力を入れるべき。

(顧客開拓、製品開発、人材育成等)→銀行を知り、自社を知る。

(3)銀行の行動原理に合わせれば銀行は楽に動かせる。

(お願いしなくとも、微妙な会社でも十分借りられる。)