第9回杉診サロン報告書(まちの駅とその効果)
今回は、「まちの駅」を成功させたNPO法人「地域交流センター」の研究員である中村俊彦氏に「まちの駅とその効果」のテーマで講演をお願いし、杉並区や商店街からの受講者も含めて、20名が集まった。講師は、「道の駅」から「まちの駅」の成り立ち、さらに今後進めようとしている「川の駅」や「健康の駅」についても言及された。具体的な実践例を数多く話され、杉並区が進めている「街の駅」との対比との面もあり、講演後にも活発な質疑応答がなされた。講演の要約は、以下のとおりである。
1.まちの駅
人・資源に働き・役割をもたせる「まちの駅」からかわるまちづくり。
比較項目 | 道の駅 | まちの駅 |
機能 | 休憩、情報交流、地域の連携 | 休憩、案内、交流、連携 |
つくる人 | 市町村等公共・公的機関 | だれでも |
場所 | 国道や幹線道路沿い | どこでも |
利用者 | 主にドライバー(車) | 主にまちを歩く人(人中心) |
費用 | 多額(億単位) | 小額(数千円~) |
設置数 | 約900か所 | 1,650か所(22年3月末) |
2.まちの駅のコンセプト
必要なものは「たてもの」と「ひと」である。
(1)4つのアイテム
1)「まちの駅」看板 | 簡易ステッカーや手づくりのものでOK |
2)トイレ・休憩場所 | ちょっと貸せるトイレ、腰掛けられる場所 |
3)まちの案内人 | 駅長さんは、「郷土愛」と「おもてなしの心」が必要 |
4)地域の情報提供 | パンフレットや地図を用意 |
(2)4つの機能
1)休憩 | トイレ&ちょっと座るところ |
2)案内 | 笑顔とこころ、情報提供 |
3)交流 | 会話や訪れるきっかけづくり |
4)連携 | 他の駅・施設のつながり |
(3)まちの駅の効果
ア.お金でなく、ひとがもうかる。
イ.ひとがもうかると、結局いろいろ潤う。
初期 | 中期 | 後期 |
まちづくり参加装置 | 連携イベント実施・PR | 回遊性・ブランド力アップ |
ウ.まちの駅は、自ら工夫し地域に働きかける「きっかけ」。
3.費用
区分 | 項目 | 内容 |
年会費 | 個人会員 | 10,000円(2か所まで設置可能) |
団体職員 | 60,000円(3~20か所)、100,000円(21~50か所) | |
市町村会員 | 60,000円(3~20か所)、100,000円(21~50か所) | |
認定料 | 新規開設1か所 |
(注)51か所以上の場合、1か所につき、2,000円
4.静岡県富士市の事例
現在、50か所、地域安全・安心ステーションとしての活動、オリジナルグッズ・周遊のしかけづくりを実施中である。
富士市まちの駅の5つの心構え
1)出会い、ふれあい、ゆずり愛
2)地道にコツコツ・・・長いおつきあい
3)身の丈に合った、おもてなし
4)愚痴は言わずに、いい事探し
5)頑張らなくてもいいけど、あきらめない
5.「まちの駅」のまとめ
小さな「駅」が大きな「共助」のネットワークに変身する。
まちの担い手は、「ひと」です。
「わか者」・・・新しい風を吹き込む人(考え方が新しい人)
「ばか者」・・・一途な思いを持ち、それを実行する正直者
「よそ者」・・・冷静に物事を捉え、新たな視点で与える視点を与える知恵者
6.質疑(→は、講師の回答)
(1)駅長の経費はどうか→自分の商売をしているので、そのなかで賄っている。
(2)事務局の人も経費がかかるがそれはどこから捻出しているのか→会費の中から支出している。
(3)まちの駅を開設したい人の教育はどのようにしているのか→事務局が行く場合と ふさわしい専門家を派遣する場合がある。
(4)杉並区の商店街は区役所の支援を受けているが、役所との関係はどうか→施設の提供やPR活動支援はあるが、それ以外の支援は特に受けていない。
(5)地域交流センターの役割はどうか→
1)情報提供し、まちの駅間での連携を支援する、
2)まちの駅のイベントをセンターのHPに載せて、全国規模でみてもらう。
(6)東京都内での実施事例と行政とのかかわりはどうか→江戸川区、荒川区、町田市があるが、町田市がまちの駅の場所提供をしている程度である。